車両の内部をVR化し点検・確認作業に活用
大幅な時間短縮と業務効率化を実現
東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)東京総合車両センターでは、首都圏を走る山手線などの日常的な保守点検などを行っている。これまで点検や故障箇所の部品を確認する際、事務所から現場に移動しての作業、あるいは図面のみでの作業であったため、業務効率の課題を感じていた。そこでソフトバンク株式会社からの提案により「ABook360」を導入したところ、車両内部を360度パノラマVR化しタブレットで事務所に居ながら確認が可能となった。図面からVRへと変わることで直感的に作業できるようにもなり、業務効率の大幅なアップに成功した。
車両内部を確認する際、事務所と現場の往復に時間がかかる。
現車が見られない場合、図面を見ながらこれまでの知識と経験を頼るほか手段がない。
車両故障に備えた事前準備に割く時間が長くなる。
車両確認に行く必要がなくなり、往復にかかっていた時間を他の業務に充てられた。
現車を360度画像で確認することができるので、図面を見るよりはるかに効率がよくなった。
故障対応の事前準備が可能になり、お客様へご迷惑をおかけする時間が最小限になる。
車両を点検・確認しに行くことにも時間がかかる
車両がない場合は図面を見て頭で考えながら仕事をするしかなかった
JR東日本・東京総合車両センターでは、車両メンテナンス・点検時の作業効率にいくつか問題点があった。電車の内装や部品を確認するには現場と事務所を何度も往復せねばならず、車両を確保できないときは図面を見ながら知識と記憶に頼るしかなかった。企画科・生産技術グループの生方氏は当時を振り返り、「特に『現車ではなく図面から全てを見る』というのには限界を感じていました」と語る。
また、実際に現場で作業を行う同グループ車両技術係・宮本氏もまた「事務所と現場は500メートルほど離れているので、往復するのにかなりの時間と手間がかかっていました」と問題点を感じていたようだった。
ABook360導入の決め手は
リッチコンテンツを組み合わせる"カスタマイズの自由度"
東京総合車両センターでのヘビーメンテナンスは年間2,000車両にも及ぶため、1工程ごとの作業効率が上がれば、全体への効果は絶大となる。そこで出会ったのが、360度パノラマVRを利用できるABook360だった。
「VRやARの流行を感じていた矢先に展示会でABook360の機能を紹介していただき、『これだな』と思いました」(生方氏)。
VRを利用した製品は他社にもあるが、ABook360を採用した決め手は「カスタマイズの自由度」だという。
360度画像を確認するだけではなく、他の画像へのリンク、テキストや音声、動画などのリッチコンテンツを自由に組み合わせることで、業務に最適なツールが完成する。
車両のパノラマ画像を使用するにとどまらず、必要な情報を埋め込み、さらに別の情報へと繋げることが可能なABook360に、現在の業務効率を格段に上げる可能性を見出すことができた。
作業時間の短縮から業務全体の改善に貢献
緊急事態への備えも万全に
ABook360を導入し、まずは作業時間の短縮に大きな効果が見られた。
車両を確認するために事務所と現場を往復する時間が必要なくなり、事務所にいながらタブレットを使用するだけで作業を進められる。当然、これまで移動などに使っていた時間を他の業務に充てることができ、センター全体の業務効率化に貢献している。
また、生方氏は「車両の突然の故障」という事態においても効果が期待できる、と話す。
「故障に対応しなければならない、その事前準備の段階で、電車の実際の中身がどうだったのかということをVRで確認できるので、お客様にご迷惑をおかけする時間を最小限にできると思います」。
これまでになかった新しいツールは、他のJR東日本職員の興味も集めているという。
「乗務員からも『訓練で使いたい』という声をいただいています」(生方氏)、「他の車両にも展開していきたい」(宮本氏)。
組み合わせ次第で様々な業務に利用できるABook360の、今後の新たな活用が期待される。
社員向けの教材としても利用できる可能性
最重要項目である「安全」とお客様に提供する「安定」を確保する
今後の展望として、宮本氏は「教育や『思い出し』という点から活用できると思う」という考えを話してくれた。様々な情報をVRに組み込むことが可能になるABook360は、マニュアルとしての活用も大いに見込まれる。リッチコンテンツの融合が作り出すマニュアルは、使用する職員の理解度を上げることはもちろん、紙資料からの軽量化という面でも一役買いそうだ。
また、宮本氏・生方氏どちらも異口同音に語ったのが、JR東日本がトッププライオリティと位置づけている「安全」であった。
「安全という観点からも大いに活用できると思う」(宮本氏)、「安全を担保するための材料としてABook360を使っていきたい」(生方氏)。日夜、車両の保守点検を行い「安全」を確固たるものにしている東京総合車両センターの業務において、ABook360がさらなる効果を発揮することに期待が持たれている。
さらに、生方氏はこう続ける。「お客様にご迷惑をおかけする時間をどんどん短く、つまり『安定』を提供するという面でも、このツールを利用していきたい」。
「安全」に細心の注意を払い「安定」を提供するJR東日本の業務のサポートとして、今後も様々な用途でABook360が利用されることになるだろう。
社名 | 東日本旅客鉄道株式会社 HP |
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本社 | 東京都渋谷区代々木二丁目2番2号 |
代表者 | 代表取締役社長 深澤 祐二 |
設立 | 1987年 |
主な事業内容 | 旅客鉄道事業、貨物鉄道事業、旅客自動車運送事業、索道業、旅行業、倉庫業、駐車場業、広告業、ほか |
2021年3月22日現在